INSIDEってどんなお話?

この文章は、わたしがゲーム『INSIDE』の物語について考察した、備忘録のようなメモです。

人によって解釈違いはあると思いますが、

「ふ~んこんな見方もあるんだ」くらいに見ていって頂ければ幸いです。

(※Spoiler alert※ネタバレあります!この文章はすでにクリア済みの方が対象です)

 

 

●物語を解釈する鍵たち

 

一つ目:主人公の立場

 

 主人公の少年は、最初、森の中で人間たちを集めていた兵士たちに、問答無用で攻撃されます。この時点で兵士たちの詳しい目的は不明ですが、銃を所持している兵士は容赦なく発砲してくることから、少なくとも兵士たちは主人公(もしくはそれに類する人物)を殺害しても構わなかったということになります(生け捕りが目的なら逃げる者を射殺する命令は出されないはずです)。また、森を抜け研究施設にたどりついても、施設の警備システムは少年を区別し、捕えようとします。その捕獲方法は非人道的であり、あまり少年の生命活動の維持は考えられていないようです。研究所内部のさまざまな危険地帯もそうで、もし少年が「研究施設にとって保持されるべき人物」であるなら、少年が落下死したり衝撃波に吹っ飛ばされるのを警備システムがただ見ているだけのはずがありません。この点で施設の警備システムと兵士たちはイコールであり、同じ目的をもっているように感じられます。つまるところあの兵士たちは、研究施設の私設軍隊なのではないか?

 

主人公は、研究施設側にとってあまり好ましくない人物であるようです。

 

 

二つ目:世界観

 

 INSIDEでは、大まかに分けて三つの世界が存在します。(地表・水中区域・研究所)

 

 まず注目したいのは水中の区域の建物についてです。水中区域の建造物は、その形状からして、もともとは地上に建てられたものではないかと思われます。地表部分に建っている研究施設と類似する形状をもっているからです。あれだけの大きな施設が水没しているのだとしたら、INSIDEの世界は過去に何らかの大規模な気候変動に見舞われた可能性があります。

 次に注目したいのは、研究施設で目にする不気味な人達です。ひとつは、オレンジのコントローラーによって操作可能な虚ろな人達。もう一つは水中にいる長い髪の生物です。これらの生き物は研究施設で作られたものではないでしょうか?それぞれ理由をあげていきます。まず、長い髪の生物は水中で呼吸をしなくても平気なようですが、物語の途中で、主人公の少年が研究施設のものと思われる器具でおなじように無呼吸で泳ぎ続けることができるようになります。また、研究施設では水中につなぎとめられた実験中とおぼしき個体を何度も見かけられることから、長い髪の生物は研究者たちの研究内容と関係づけられると思います。

 ゾンビのような虚ろな人達についてですが、この人達は、私は研究施設の最奥部にあるあの「」から生み出されたと考えます。というのも、「虚ろな人達」は研究施設のどこにでもいるのですが、地表に近いところでは人間らしい形をしているのに、最奥部にいくにつれ、つまりあの「」に近付くにつれ、だんだん形がいびつになっていくのです。さきほどの長い髪の生物の実験段階個体と思われるものも、生命ある生き物というより、ちょっと物体じみたいでたちをしていました。それらの形状は、主人公が「」と融合したあとの逃避行で、衝撃で「」からこぼれ落ちるパーツに類似しています。おそらく、研究施設ではあの「塊」から操作可能な個体や水中生存可能な個体を生みだしていたと推測できます。

 

三つ目:謎の丸い物体

 

 隠しエンディングをみるために、破壊する必要のある丸い物体。一体あれは何のために存在しているのか?

 私は、隠しエンディング自体がその答えになっていると思います。隠しエンディングでは、主人公の少年が秘密の部屋にある機器を破壊すると、少年自身がこと切れてしまうという結末を迎えます。つまり、あの部屋のコンピュータ自体が少年の本体だったということになります。そして、例の丸い物体をすべて破壊しなければ秘密の部屋に入れなかったということは、丸い物体は、少年が秘密の部屋に近付かないよう、少年をコントロールする装置だったということになります。また、少年がなんのためらいもなく秘密の部屋の装置を破壊できることから、少年は自分がどこまでコントロールされているかは知らなかったのではないかと思われます。

 

 

●考察

 

以上のヒントをもとに物語の核心を考察していきますが、ここからは本当に個人の考えです。製作者さんの考えるところとはかけ離れている可能性があります。

 

 通常エンディングについてですが、少年が「塊」と融合して逃げ出した後、施設の職員たちは融合体をみちびいて水槽に閉じ込めようとします。しかし融合体は水槽を逃げ出し、研究所の外で静かに動かなくなる、という結末です。

 なぜ融合体は動かなくなってしまったのでしょうか?最初に私は、少年と融合する前の「塊」がケーブルでつながれていたことから、「塊」はあの水槽で栄養をもらって生きており、融合体となって水槽を逃げ出したことで死んでしまったのだ、と考えました。しかし、施設の職員たちは融合体を生け捕りにしようとしていました。もしあの「塊」が常に栄養補給が必要なのだとしたら、融合体の逃避行の間に職員たちは何らかの手をうつはずです。それなのに融合体がどれだけ長時間施設をうろつこうが、ふたたびケーブルを接続しようとする職員はいませんでした。

 

 私は栄養失調説よりも、融合した少年が、あの「塊」にとって毒性のウィルスだった。という説をとりたいと思います。少年が水槽のなかで「塊」と融合したとき、「塊」のほうが苦しみもがくように受け取れたからです。冷静に振り返れば、なぜあの少年が「塊」と融合できるのか、なぜ少年はあの場面で「塊」にもぐりこもうとしたのか。不思議なことだらけですが、先述の隠しエンディングの内容から、あの少年は、「塊」を殺すために「誰か」が作り出した人型のウィルスだったと考えた方が自然なように思われます。

 

では、なぜその反逆的な「誰か」が生まれたのかを考えていきます。ゲーム中で明確な説明はなにもないので、研究者たちによる独裁支配があったなどいろいろな理由が考えられますが、個人的には「“人類滅亡”説」を提唱したいと思います。つまり、最初は人類の生き残りをかけて過酷な気候変動に適応できる人間を作ろうとしていたのに、何年も研究を続けているうちに人間のほうが「」から生み出された物に置き換わってしまい、絶望した最後の人間が「塊」を殺そうとした、という説です。

 もし、主人公が「虚ろな人達」とおなじように作られた存在である、と仮定すると、動きの機敏さの差という矛盾がまず出てきます。しかし、主人公や兵士や研究者たちは、その動き方から「虚ろな人達」と区別できるとはいえ、かの人たちが生身の人間であるという保障はよく考えてみればどこにもないのです。一度このことに気付くと、異様に血の気のない施設の職員たちの容姿が、単なるデザイン上の問題を超えて意味深なものに思えてきます(私の考えすぎかもしれませんが……)。融合体を水槽に捕えようとしたとき、水槽の周囲に幽霊のように集まっているさまを見ると、どうも施設の職員たちも「作られた存在」ではないかという疑念がぬぐいきれません。

 その場合、主人公や兵士や研究者たちの機敏さが「虚ろな人達」と違う理由を考えると、携わる役割が違うため、と推察されます。おそらく「虚ろな人達」は、地下作業や衝撃実験など、危険な作業に従事するため、意図的に知能レベルを下げられているのかもしれません。

 

施設の研究者たちは、あの「塊」から生命体を生み出す実験をしていたのだと思われます。最初の方に登場した、あの森の中の無数のポッドは、研究所から直接人型の個体を地表へと運び出し、環境に適応できるかテストするためのものだったのでは…というのがわたしの考えです。形がいびつな「不完全な」個体は、まだ実験段階の産物として研究所付近で放っておかれていたのだと思われます。

 あの少年は、「塊」を殺すために、反逆者によって人工的に作られたウィルスだったのではないでしょうか?

最初の森で、大勢の人間が兵士たちに連れ去られていました。それはどの個体が「ウィルス」か分からなかったので、疑わしい個体を無差別回収していたのだと思われます。

たぶん、兵士たち(または研究施設側の人達)には「ウィルス」がどのような形状かがわからなかったのではないでしょうか。主人公が「塊」に接近したとき、まわりの研究者たちは不審視するくらいで少年を排除しようとはしなかったことからもそう考えられます。最初、地表で死んでいる豚たちは先述の気候変動が原因で死んだのかとおもったのですが、それにしては死体が妙に新しいのです。おそらくは「ウィルス」が家畜に化けているのではと思った兵士たちによって無差別に殺されたと考えた方が自然に思えます。

 

 

●まとめ

 

この物語のテーマは「自由」ではないでしょうか?

 

丸い物体にコントロールされた少年は、

研究者たちにコントロールされた「塊」と対のようになって、

破壊的な行動を伴いながらその対比の極限で融合し、

人間(少年)でも物体(「塊」)でもない存在として息絶え、

本当の自由を手に入れる…

通常エンディングはそういう終わり方なのだと思います。

最後暖かい光が融合体をつつむのも、

少年と「塊」への手向けなのかな?

 

隠しエンディングのほうは、ネタ晴らし、というか、

少年はゲームキャラクターのようにコントロールされた存在でした、

というやや楽屋オチのようなブラックな終わり方で、

そういう意味では、通常エンディングのほうが救いのある終わり方、

といえるかもしれません。